刺繍工場に潜入!の巻

column
本日は、marble SUDの“刺繍Tシャツ”を支えてくれている刺繍工場にお邪魔してきました。
シーズン毎に新しい柄が登場する“刺繍Tシャツ”。緻密で繊細な表現はTシャツに描かれた絵画のよう。人気のTシャツがどうやって出来ているのか…企画スタッフのアオとプレスのウメがいざ潜入です!

9月の晴れた水曜日、刺繍工場に向かうべく都内某所の駅に降り立ったアオとウメ。駅に着くと、職人の亀田さんが車で迎えに来てくれました。ニコニコと笑顔が素敵な亀田さん。移動中の車中にも柔らかな空気が流れます。
刺繍職人になったきっかけを伺うと、奥さまとのご結婚がきっかけとか。アパレル会社を経て、奥さまのお父さまが築いた刺繍工場に入社し、今では立派な二代目に。現在は中心となって製作を行なっているそうです。お洋服への刺繍をはじめ、刺繍のワッペンなどを製作。先代の代から数えて、創業60年以上というから驚きです。家族で営まれている、まさに老舗の刺繍工場です。



刺繍工場にいざ潜入!
工場は、ご自宅の1階にありました。車が到着すると、奥さまがお出迎え。亀田さんと同じ優しい笑顔に思わずほっこり。まるで里帰りしたかのような穏やかな気持ちになります。扉を開けると、ひとつのお部屋の中に刺繍の機械がずらーっと並んでいます。カシャ、カシャ、カシャ…と鳴り響くミシンの音が心地のよい空間です。

“亀田さんご夫妻。お二人の仲の良さが伝わります。”

さっそく、実際に刺繍をしている様子を間近で見させていただきました。
刺繍されていたのは、2023秋冬コレクションの新作Tシャツ「EMB zigzag penguin」。大きなペンギンのモチーフを、直線のラインを重ねる事で表現したグラフィカルな1枚です。作業は、8台の機械による同時進行。同じ動きを8台が寸分の狂いなく繰り返していきます。見ていて面白いのが、機械の動き。針がついた上の部分は動かず、Tシャツをセットした下の台がカタカタと忙しく動きます。ラインダンスを見ているかのようで、なんだかワクワク。


同じ部分をなぞっているかと思えば、ピョンと遠くまで針を運ばせて、思いがけない線を描いたり。次はどこへ行くのだろう?じっと目を凝らして見続けてしまいました。

“このデザインの場合、20~30分ほどで刺繍が完成。”
刺繍の様子を興味深く見ていると突然、機械が止まりました。ボビンにセットした下糸を使い切ったようです。下糸が終わると、ピピっと赤いランプが光り8台が一斉にストップ、すぐにボビンを差し替えます。まさに、人と機械の共同作業です。

必ず入っている“marble SUD”のロゴ。この部分は、最後に刺繍をすると決めているそう。完成したぞ!という判子を押したような感覚だそうです。なんだかカッコイイですね。

数センチの線がいくつも描かれていますが、実はこれ、一筆書きのように全部繋がっているそうです。いかに効率良く、かつイメージ通りに仕上げるか。どうやら“針をどう運ぶか”、動きの指示をするデータ作りにその秘密がありそう。



匠の技が光るプログラミング作業
作業は、マーブルシュッドから、元となるイメージイラストが届くところから始まります。
イラストの入った封筒を開ける瞬間、亀田さんと奥さんはすごく緊張するそうです。どんなモチーフなのか、どんな刺繍の表現を希望しているのか…ユニークな絵柄を得意とするマーブルシュッドだけに、こんな物がモチーフに!と驚くこともしばしば。「ラフな手描きの味わいをどう表現するか、いかにマーブルさんのイメージに近づけるか、そして実際に刺繍で表現することで、マーブルの期待を越えていけるか!」とても勉強になりますと亀田さん。いつも依頼をしているアオも嬉しいお言葉に感動。


まずは、イラストを眺めてイメージを膨らませるそう。
「自分なりにどうやったらペンギンを可愛く表現できるかイメージを膨らませます。お腹のぷくっとしたラインが可愛いかな?頭のフォルムにもこだわりたいな…。マーブルさんのイメージは仕上がっているけど、刺繍に落とし込んだ時に一番ベストな仕上がりを考えていきます。線で表現するか、ここは面で?ここはクルクルと円を描く様に…どの色から刺繍をして色を重ねていくか…表現方法は無限大です。ひとつのイラストをプログラミングするのにおよそ2日かかります。」

答えのない作業はアートそのもの。経験と知識がものをいうまさに職人技です!動物なら毛並みをどう表現するか、食べ物なら美味しくみえるようにしたいなど、刺繍への想いは増すばかり。どんなお話も穏やかな表情で語る亀田さん。「おじさんだけど、可愛いく仕上がる様に愛情を込めて考えてます!」とお茶目な一面も。

実際にプログラミングをしているパソコンで、作業の様子を拝見。ひと針、ひと針丁寧に描いていく根気のいる作業。パソコンのモニタ上に刺繍のシミュレーションが浮かび上がってきます。
パソコンに保存されていた過去のお仕事も見させていただきました。私たちも知らない絵柄です。マーブルシュッドとのお付き合いが始まったきっかけのデザインだそうで、驚くことにその原画も登場!20年以上、ずっと大切にしまっておいてくださったそうです。

2020年の春夏に登場した、リアルなチョコレート刺繍も亀田さんによるもの。銀色のアルミの部分も再現度がすごい!美味しそうですね!

他にも、黒一色の糸で繊細に表現された野鳥が描かれたTシャツも見せてくださいました。長い年月を経ても、マーブルシュッドのスピリットを感じるデザインになんだか嬉しくなるウメでした。




刺繍の魔術師は、色の魔術師

工場の一角には、山積みの刺繍糸の箱。色はデザインを見ながら選ばれるんですか?という質問に「面白いことに、ブランドさんごとに好きな色が決まっているんだよね。イエローでも、マーブルさんはこの辺、他社さんはこのあたり、という感じでなんとなくトーンが決まっている。その情報が頭に入っているからそこをベースに色選びをしています。」

好みの色のことまで熟知されているとは、さらに頭が下がります。亀田さんの工場の機械は、最大9色のカラーがセットできる仕様。その中で、一番いい配色を考えるのも腕の見せどころです。デザインやモチーフのサイズによって糸の色や太さに変化をつけていきます。


長年の経験が物を言う!セット術
プログラミングが終わると、いざ試し刷りならぬ、試し刺繍を行います。2~3パターンの仕上がりを見本を作ってクライアントに提案するそうです。
そして、もうひとつの難関が“上糸”のセット。刺繍に使われているのは、引っ張ると手で切れてしまうくらい柔らかく繊細な糸。高速で動く機械に合わせて、絶妙なさじ加減で糸調子を合わせていきます。機械のボタンに引っ掛けるだけでもプツンと切れることもあるそう。さらには色によっても強さに差があるというから、途方もない作業です。


ベースになるTシャツも、緩すぎず、張りすぎずの丁度良い強さで枠にはめていきます。ちなみに、枠にセットするこちらの機械は先代のお手製。アルミ製の物も市販であるそうですが、Tシャツを痛めてしまうこともあるのでご自身で作られたそうです。

枠の機械の後ろにある、カラフルな糸台も、ワッペン製作時の作業効率を考えて考案された先代のお手製だそうです。今も現役の先代!取材の日も、メガネをひょいとあげて、ワッペンの製作をされていました。


取材の最後に、僭越ながら今後の夢を伺ってみました。
「大きな事は目指していなくて、少しずつできる事やチャレンジを増やしていきたいかな。ワッペン製作ももう少し増やしていけたらいいな。」なんとも、亀田さんらしい謙虚で優しさのつまったお返事が返ってきました。
マーブルシュッドの刺繍は、愛情たっぷりの亀田さんご一家から生み出されるからどこか温かみがあるんだなぁ、と感じる取材となりました。
作り手の想いを感じる事で、より一層お洋服への愛着が湧いてきますね。本日登場した「EMB zigzag penguin」も現在販売しております。ぜひ、手にとって匠の技を間近で感じとってくださいね。

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